O(オー)




「俺にも言わせろ!」と、毎月本誌の少ないスペースをフルに使って吠えているLOFT RECORDS太田が、「いいっすよー、いいっすよー」と今最も熱く吠えているのが、4月17日に1stアルバム「IT'S」を発売するO(オー)である。結成は98年8月というまだ若いバンドであるが、70'sオリジナルパンクを基調としつつも、Melodic、Garage、New Waveなどを消化した良質の楽曲を提供している。まだ生まれたばかりの生物Oは、これからどのように進化していくのだろうか? Oのメンバー全員にそのへんを聞いてみた。
 Guitarの赤松は、最初写真で見たときはかなり危ない感じだったが、実際は、ひょうひょうとした掴み所のない好人物で、バンド内にへんな言葉を流行らせるムードメーカーでもあるようだ。BACK STABBERというバンドをやっていた赤松が思い描いたメンバーを集めて始動したのがOである。

「Oは、前のバンドと違うことをやろうという訳じゃなく、決まったことだけをやりたくなかったんです。決まった人しか観に来れないようなのとか」

 Vocalの館山は、ニューウェイブ・オブ・ニューウェイブ・シーンでも有名なCHICAGO BASSを経た後、Oに参加した。

「CHICAGO BASS自体はそれほどニューウェイブでもなかったと思うし、さらに言えば僕がニューウェイブじゃなかったんで(笑)」

Oにおける館山は、Vo.の他にソングライティングも担っている。CHICAGO BASSの時と違い、かなり責任のある立場となった訳だが、そのへん本人はどう自覚しているのだろう?

「Vo.をやるのは今回初めてです。今までは、掛け声とか叫んだりしてただけだったんで(笑)。なんか今は充実してますね。あんまりコツコツやってる姿を見せたくなかったんですが、今は自分を外に出していくっていうのが課題ですね」

 赤松、館山と意気投合してOを結成したもう一人が、紅一点、bassのYurikoだ。

「前から友達で、よく対バンをやってたんです。その時は、女の子3人でパンクバンドをやってたんですが、それが解散した時にOに誘われたんです。」

 当初は、館山がDrumを兼任していたが、後にDrumのShuが加入し、ここに現在のOが誕生する。ドレッドロックのShuはバンド内では最年少にも関わらず、一番落ち着いた雰囲気を持ち、ドラマーらしくバンド内のバランスをとっているようにも見えるが?

「いや、自分では全然わかんないですけど。でも、まとめようというよりは、自分の個性を出そうというほうが強いですね。当たり前の事だけど、一応みんな他人じゃないですか。まとまるわけはないんだから、その中でどれだけ自分の個性を出せるかだと思うんですよ」

 Oの特徴は、MelodicやGarageなどの現在主流の音を取り入れつつも、ラモーンズやバズコックスといった70'sオリジナルパンクと同質の疾走感を持ち合わせているところだ。まだ若い彼らが70年代パンクをどのように消化したのだろう?

Shu「きっとみんな何かのシーンに入っちゃうような音楽を作りたくないと思うんですけど、だからといって他と全く違う音楽を作ろうとしてるわけじゃないです。まあ温故知新といえばそんな感じですかね」
館山「温故知新って何?」
赤松「俺に聞くなよ(笑)」
館山「まあ、70'sをそれほど聴き込んだってわけでもないんですけど。基本的に曲はギターで作ってるんですが、それほどコード進行とか知らないんで、シンプルなものしかできないんです」

 Oは、99年11月に発売されたV.A.『SCHOOL SHOOTING』に参加したことをきっかけに、いくつかのレーベルからオファーを受けた。その中でTIGER HOLEレーベルから出すことになった理由はどこにあったのだろう?

赤松「直感ですね。いろんなところからオファーがあったんですが、なかなか出すというところまでいかなくて。そこにTIGER HOLEの石川さんから電話が掛かってきて、いきなり“アルバム出さないか!”って言われて(笑)。その脳天気な声で決めたんです。O的には、これで出すっていうのがいいかなと」
レコーディングはどうでした?
赤松「そうとう好きにやらせてもらいましたね。僕もびっくりするぐらい」
Shu「ジャケットから何からすべて自由にやりましたから」
ところで、バンド名のOはどういうふうに決めたんですか?
赤松「ちょうどこう秋の夜長かなんかに、“STUDIO TAKE ONE”っていうスタジオがあって、その時“TAKE ONE”の“O”の所だけが妙に抜きんでて見えて。“O? オー? オオー!”って(笑)、これはなんか未来的な、何にでも繋がるような、なんかいいなあって」
みなさん、それでいいんですか?
Yuriko「まあ、いいんじゃないって(笑)」
では、現時点のOの課題は一体何であるのだろう?
赤松「ライブですね。今までは力まかせというところがあって。もっと練習して場数を踏まないとダメだと思ってます」

4月以降は、ライブもたくさん決まっており、今後は次第にライブバンドとして成長していくことだろう。とにかく、メンバー全員と話していて感じるのは、Oが4人それぞれの力を超えたある大きなパワーを掴み掛けている段階にあるということだ。もちろんそこには非常に良好なバンド内の信頼関係があるということだろう。

Yuriko「柔軟性があると思うんです。レコーディングで録り終わった後でも、アイデアを入れてもらえるし、それはすごくいいことだと思うんです」
赤松「Oというものがすごくいい感じになってると思いますね。これはヤバイという状況になっても、必ずいい結果に結びつくというか。」
Shu「意見を押し殺すようなバンドじゃないですから。例えば誰か一人が意見を言えばそれを尊重するし、それがダメだったら言った人はちゃんと退くし」
赤松「言った人が一番わかるよね。これダメだなって(笑)」
館山「今までのバンド経験から言うと、メンバーからアイデアの欲求がなければないほど寂しいと思うんです。アイデアが出た瞬間がうれしいというか。それによって自分の考えてたことの方向が変わったりするけど、その方が自分にとっては面白いし。それがバンドの面白さだと思う」
Yuriko「押しつけがましいかもしれないけど…みんなを信じてるし、自分も最高までいけるということを信じてる。そういう感覚が楽しいですね」

(TEXT:加藤梅造)