木原浩勝




一一木原さんプロデュースのイベントを始めてほぼ一年がたちますね。
木原 一番最初が『空想科学読本』イベント、その後に「怪談イベントをやりたいんだけど」って、なかば無理矢理に『新耳袋(※)』(以下新耳)のイベントをやらせてもらって、お客さんが定着したら好きなイベントやらせてねって言ったんだよね。

怪談の意味をはき違えている
一一予想通り、新耳は定着化して、次に開催したのが「古代史(※)」と「怪獣魂(※)」。その成功の火付け役となった「新耳袋」はこの世で解明できない不思議な話を解明しようというものではなく、そういった話を取材して口語体で紹介していくといった本ですよね。木原さんは『空想科学読本』や別冊宝島『このアニメがすごい』などに関わられていたので「どうしてそれはそうなるのか」という探求を得意としているイメージがあるのですが、新耳に関してはそれをしないというのが不思議なんです。なぜそういうった形態の本を出そうと思ったんでしょうか?
木原 怪談の意味をはき違えている人が結構いるんだけど、怪談は字のごとく、怪かしい話をする座という意味でしょ。それを解釈するために語ってしまうともう怪談じゃない。例えば真夜中の高速道路に女の人が立つと、それは地縛霊だとか、昔ここで事故があったからだとかと解説してわざわざ怖くないものにするのって変でしょ?

一一興ざめしちゃう?
木原 そう! 漠然としてわからないものって怖いでしょ。何がいるのかわからないから闇が怖い。笑いや感動を楽しむ時にそれがナゼ笑えるのか、ナゼ感動するのか解説は入らないでしょ? “怖い”と楽しむ時に限って“怖い”を解説してくれるのはイヤでしょ? 体験した人の怖いと感じた点だけが重要なんです。それを記すために本を出したし、文字で伝わらないナマの部分をトークにしたかった。

恐がりだから怖くなくする護符がほしかった
一一どうして怪談にこだわるのでしょうか?
木原 僕は子供の頃から怖い話が好きだった。なぜ好きかというと、恐がりだったんだよ。好きなんだけど、恐がりだから怖くなくする護符がほしかったんだ。ところがそれより怖い話知るという矛盾した路にハマってしまって……。

一一雪だるま方式ですね。
木原 そうそう。そのうちに怖い体験を集めるコツをつかんでいく。「怖い話を教えて下さい」と言うより自分が知っている怖い話をすれば、別に怖い話をしようと思っていない人間も「そういえば……」と話をしてくれるってわかった。いい話を仕入れるためには聞き手より語りべになるべしと変化していった。
一一先程、護符とおっしゃったのですが、怖い話は色々な意味で護符と化す気がします。怖い感情をもたない人間はそういないですよね。怖い話をきっかけにコミニュケーションがとれる。だから“共通の話題”という護符になる。

バカげた話に思えることを大人が話していることに
親近感を覚えた
木原 そうだね。今の中高生は女のコと話たい時は「ねぇ、こんな話知ってる?」って怖い話で話すきっかけを作って“語る”能力を身につけてほしいなぁ。

一一木原さんがそうだったんですね。
木原 う〜ん。(照笑)

一一怖いという感情は自分にはどうにもならない、理解できない大きなものが現れた時に発生する感情じゃないですか。それを提供するということはその聞き手よりも自分が優位にたったような気になると思うんです。怖いと思わせることによって聞く相手を自分に引き込み、凌駕できる快感を怪談を話すことによってえることができるんじゃないでしょうか。
木原 それはあるね。恐がりなのに怖い話を集めはじめるうちにその快感を知って、怖い話を語れば語るほど、自分と同じように恐怖が相手に伝染したって気になるから。あとね、子供の頃、学校の先生とかが「ある訳ないだろう」って話を真剣な顔で話していたのが強烈な印象として残っているんだよね。怖い!と思ったのと同時にバカげた話に思えることをしている時だけは大人に親近感を覚えたんだ。

一一親近感?
木原 バカげた話って、親密じゃないとできないよね。怪談ってそれが簡単にできちゃう。大人はキライで信用しなかったくせにね。

僕たちが紡いできた怪談が伝染して生きていく
一一では怪談という仕掛けを作って、そこにいる人と親密になる。プラスワンでのイベントはそういったものなんでしょうか。
木原 うん。人と接点を持つためなのかもしれない。僕や相棒の中山(市朗)(※)から聞いた話をそこに来た人が誰かに話してくれることによって僕たちが紡いできた怪談が伝染して生きていくから。そしてその話を思い出したり、聞いたりする時に僕や中山を思いだしてくれるかもしれないからね。僕が今でも怖い話をしてくれた大人たちを忘れられないように。

※新耳袋…同名の本がメディアファクトリーから発行されており、その本にまつわるあらゆる怪談を語るイベント 
※古代史…日本古代史を探るといったイベント。奥が深く、ここでは書けないので是非トークライブを体験して下さい。
※怪獣魂…3月から開始になった特撮作品・怪獣映画について語るといったイベント。辛口トーク。双葉社から同名の書が発行されており、そこから銘々された。
※中山市朗…木原氏の大学時代からの友人であり、新耳袋のもう一人の著者。トークの相棒を務めるのは必ず中山氏である。