復活17回目

権力に守られる言論の自由とは?

 プラスワンがオープンして3年9ヵ月。世界初のトークライブハウスとして、他にその類をみない空間は、あらゆる雑多な文化を取り込んできた訳だ。毎日毎日それは1ヵ月に50以上のイベントを組んできた(4月発売のトーキングロフト3世に今までの全スケジュールがアップされているので参照されたい)。開店当初は「なんじゃ、それ!」と言われ、時には「新宿サブカル御殿」(中森明夫氏)、「乱闘、襲撃酒場」(鈴木邦男氏)、「闘鶏場」(藤井良樹氏)、「人生に病む人の救いの場」(今一生氏)などと呼ばれ、今ではそれなりの市民権を獲得し、オタク連中には「オタクの聖地」などといわれながらも、国会議員から自衛隊、右翼、左翼、変態、文化人、市民運動家、ホームレスと「面白そうなこと」についてはどんな人にでもその有名、無名にかかわらず表現の場を提供し続けてきた。

 がしかし、プラスワンが拡大再生産される中で、混乱やトラブルが増え、脅迫、襲撃、警察の介入などが数々あったが、そのつど出演者・店・お客さんを含めた我々自身で解決をはかってきたつもりだった。
 今年3月11日に起きた事件はプラスワン史上実に情けない、そして、それはプラスワンの存続意義までに発展しかねない事になった。もし、このような事が、年中茶飯事に起こる事になれば、まさにプラスワン(特に政治問題)は国家権力ー公安の監視下に置かれ、その「自由」については相当の制約を受けることになる。まさに、いまの社会が抱えている「規制とタブー」に挑戦し続けたその姿勢は崩壊する事になる。

 私たちプラスワン運営委員会は下記の結論をもって「自主日本の会ー塩見孝也氏」とは決別する抗議文をここに提出する。

絶縁状

ロフトプラスワンは「自主日本の会」とは絶縁します。
99年3月11日塩見孝也プロデュース「北朝鮮最新報告」のイベントにおいて、プラスワン側の再度の意向を無視しての「警察権力ー公安の店内導入」と来店したお客さんへの強制的な一人一人の「写真撮影、住所、氏名の強要」に強く抗議するとともに、「不屈の共産主義者?
塩見孝也氏とは今後一切絶縁する事にします。

 なんともプラスワン史上最悪な汚点を残す事をやってくれた。塩見氏一派は店側に何の許可もなく(こんな事は許可するわけがない!)、塩見氏防衛のため「国家権力ー公安」をプラスワンに導入し、あまつさえ来店したお客さんに住所、氏名まで書かせ、写真まで撮るという情けない「暴挙」を強行した。
 この異常ともいえる状態の中、午後7時30分、イベントは開始された。しかし程なく、この異常事態に抗議する店側、お客さんと塩見氏一派ー公安とトラブルが発生した。
 プラスワンと一部の客は公安関係者に店からの退去を求めた。しかし自主日本の会は「我々を守って貰うために呼んだんだ!」と言い放ち、店側と意見が対立した。
勿論代表塩見氏は「自分の安全」が確かめられるまで店には来ないつもりか?氏が登場したのは午後9時すぎであった。(それまで車で回りをぐるぐる回っていたそうだ)それも5分程度。お客さんの抗議のヤジの嵐のまえで、「どんな組織か解らない脅迫状のため、言論の自由を守り、お客さんの身の安全を確保するためにやもなく新宿暑に警備をお願いしました。店側に許可を求めなかったのは謝罪します」とただそれだけ。
 店側は公安と自主日本の会に「北朝鮮最新報告」のイベントの即時中止ー店外退去を通告した。

 そもそもの発端はこうだ。
 1ヵ月ほど前プラスワンの事務所に1通(合計3通)の自称「右翼」と名乗る(馬鹿馬鹿しいので脅迫者の名称を書く気がしない)から「北朝鮮の走狗塩見孝也を殺す」というもんだった。どんな右翼の関係者に聞いても「そんな団体聞いたことがない」と言われるくらいの代物だったのだが、これに対して、自主日本の会側は異常反応をしだした。 「イベントを中止にするか?強行するか?」ということらしい。店側と自主日本の会との電話、話し合いが数度にわたってもたれた。「もし、逃げるようだったら、塩見さんの政治生命はなくなりますよ」「訳の分からない脅迫状で、警察権力を導入するのなら、店の存在意義すら疑われるのでそれだけはやめてください」と店側は強く主張した。この店は柳美里のサイン会中止した、出版社や書店とは違うのだ!と。
 勿論警察一般を完全否定するという訳ではないが、政治問題に関しては必ず「公安」はついて回るものだし、体制にとって都合の悪い事は弾圧の対象になる事は間違いないのだ。
 店側も対策は講じた。店員を全員男にし、常連の屈強な連中を配置した。また、銭湯的労働者連合、全貧連などの左翼学生達は思想的違いを越えて、自主的に塩見氏を防衛に来たし、一水会の鈴木邦男さん、木村三浩さんも防衛に参加した。
 まず、その人たちが怒ること、怒ること!鈴木さんなんかは、絶叫していた。 公安がいる前で、もう、警察の悪口を言いたい放題。公安の連中もなんともばつの 悪い思いだったに違いない。「なんで、俺達、主催者から呼ばれたのに、こんなにいわれなきゃならないの?、、」
 連合赤軍事件で28年間牢獄に入って3ヵ月前に解放された、Uさんは「こんな奴と、昔赤軍で行動をともにした事が恥ずかしい」との発言。「いまだに、チョゴリを着て、通学している朝鮮女子高校生にはずかしくないのか?」。「自主日本の会は所詮サークル」(大学サークル以下)なんだね〜 なんて意見が続出。自主日本の会のある人物の発言「俺達今までは公安に追い回されている立場だったが、権力に言論の自由を守ってもらえるんだったらこんないい事はない」には場内絶句。

 午前12時30分、「北朝鮮最新報告」中止後にその場にいたお客さん達と急遽行われた「権力に守られる言論とは何か?」のイベントは終了した。そして「脅迫者」はついに現われなかった。でも、この事件は今の若い連中には貴重な場となったことは確かで、 それに関しては塩見さんに感謝したい。
 この事件は今各インターネットの掲示板で熱く論議されている。私めが主催する「おじさんとの語らい」でも、色々な意見があって、面白い。    
ロフトプラスワン席亭 平野 悠 


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