復活39回目

日本最大の掲示板2ちゃんねるにデビューした?!(後編)

 なんともあれだけ盛り上がった「プラスワン2ちゃんねる事件」も、もう一ヶ月も過ぎると色あせてしまって、何か書く方の迫力がなくなってしまう。これは本当に困ったことだ。
 この連載も、6年近くやっていて書いているときは盛り上がって、前編、後編などとわけるのだが、後編を予告したのにも関わらず、書かない場合が多く、ルーフトップ編集部の斉藤嬢から「今度はちゃんと書いてくれるんでしょうね」と文句をつけられる事が多い。
 う〜ん、不思議だ。あれだけ盛り上がった「事件」もプラスワンでのイベント終了後、2ちゃんねるの各掲示板は全くと言って良いほど、書き込みがなくなってしまった。それはみんな示し合わせたように沈黙している。見事に、なのだ。最低「総括」らしき事をするのが当たり前なのだが、全くないのだ。所詮匿名で無責任に遊んでいる連中にはそんな義務感も責任感も必要ないのだろうか? それとも今の若者ってそういうものなのかという疑問が私の脳裏を支配した。12月18日から20日までの間の2日間でメイン掲示板は書き込みレスが1000をはるかに越えて「ネオむぎ茶事件」以来のヒット?を記録したにもかかわらずなのだ。
 あまりの不思議さに私は各方面に尋ねて見た。
「一体どうなっているんだろう」
「彼らが全く書き込まなくなって一斉に引き上げたということは、平野さんや鈴木邦男さん(元一水会代表)に敗北宣言をしたということじゃないんですか、普通 だったら当然色々な批判の嵐なのに、今回全くそれがないということはそういうことなんだとと思います。彼らの完全敗北な訳です」と言うのが私に近い2ちゃんネラーの意見だった。
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 さて、12月20日、7時30分。私はとりあえず一人でステージに上がった。鈴木さんはまだ来店していない。勿論満員にふくれあがった会場は全員と言って良いほど私への敵意に満ちた雰囲気だった。
「さっき歌舞伎町のドンキホーテに行ったら金属バットが全くなくなっているので、2ちゃんネラーの引きこもり野郎がみんな買ってしまったのかと心配になっています」と初っ端から彼らに喧嘩を売った。そうすると会場はブーイングの嵐になった。
「おっと、君たち引きこもりも、結構元気があるじゃないか? 俺もこれで安心した」といいながら私はひろゆき氏(2ちゃんねる管理人)と他のゲスト、いずみちゃん、田中デジタルホン氏をステージに招き入れる。
 それはもう最初から私がちょっと喋るとヤジの嵐だった。会場全員が私に敵意を持っている。こちらから指定してないないのに無数に挙手があがる。まあ、ここは私のホームグランドだし、こいつ等若造に負けてなるもんかという気合がだんだん入ってきていた。これはもう何年も前、プラスワンで行われた「オタクアミーゴス」事件の時の会場とよく似ていると思った。あの時も私はこのコーナーで「オタク」を馬鹿にしたような記事を書いたのが発端だった。唐沢俊一さんや岡田斗司夫さんが怒り狂って大きなバトルになって大変だった事を思い出していた。
 最初の争点は「2ちゃんねる忘年会」と告知しておいて、右翼を呼ぶとは何事かと言う彼らの異議申し立てだった。
「この店の企画は店側にもゲストを呼ぶ権利がある。このイベントは2ちゃんねる側がこの店を貸し切りにして買い取った訳でない。そもそも、一日店長であるひろゆき氏が前回の2ちゃんねるナイトは面 白くなかった、やはり予定調和って面白くないんですね。僕は何が起こるかわからない、無茶無茶なイベントの方が好きなんですよって言っていたんで、では少し面 白くしてやろうじゃないか、と言うのがきっかけだったんだよ。君たちも右翼?の鈴木さんなんかと話す機会は滅多にあるもんじゃないから、とても素晴らしいことだと思うのだけれども、、、」
「それでは2ちゃんねる忘年会というタイトルをはずすべきだ」
「即刻、解散するべきだ! 詐欺だ!」
「いや、こういう忘年会もあって良いと思うし、2ちゃんねる忘年会をむちゃくちゃにすることがテーマだったんだから文句のある奴は来なければいい。知らないで来た人には申し訳ないけど、この店の基本は居酒屋なんだよ。ライブチャージを2〜3千円取っているのだったらそれは詐欺かも知れないけど、確かに南京豆のお通 しが600円というのは少し高いと思うけど、つぼ八だって情けないお通しが強制的についてきて300円のお通 し代を取っているじゃないか? タイトルが違う、面白くないだから金返せって言われても、だって君はビール飲んでいるじゃないか? 君たちがつぼ八に行って、ビール飲んでこの店面 白くないから金返せって言うか?」と居直る私。
そんなことをやり合っているうちに「匿名性の是非論」になった。ネットに氾濫するハンドルネームや名無し達の無責任な誹謗中傷、、所詮自分は何か発言したいのだけれど、でも、リスクは負いたくないと言うのが匿名性から見え隠れする原理なのだ。
「俺だったら、知らない奴から、おまえ逝ってよし、バカは死ね、きちがいなんて書かれたら、これは決闘もんだ、許せない! 人を非難攻撃するのだっらちゃんと逃げ場のないところでやるのが人間としての筋なはずだ」
「俺らは匿名でも最後まで議論につきあう。実名で書き逃げするアナタの方が卑怯じゃないのか!」と、ある2ちゃんネラーが反論する。
「企業や官僚の内部告発なんかは匿名でしかそのほとんどは書き込めない。それがネット社会の醍醐味だと思う。だからネット社会は面 白いんだと思う」と、いつになくひろゆき氏も真面目に発言する。
 そうこうしているうちに鈴木邦男さんが登場した。結構それまでに議論は盛り上がっていて、多くの会場にいた若い者達は、「ちゃんと対立軸があって真摯に討論する事?」の楽しさに酔いしれてきていた。それなりにここに集まった若者連中にはとっては新鮮だったのだろう。そして鈴木さんの話術とその内容は圧巻だった。あれだけ右翼を忌み嫌っていた参加者達は鈴木さんの一言一言に拍手が巻き起こった。みんな今日ここに来て面 白かったという顔をしている。鈴木さんの主題は「国家や民族なんてものに左右されない強い自己を創ろう」というものだった。誰が電話をかけたか知らないが、イベントボイコット組(多分違う居酒屋で飲み会を開いていた人たち)が店にやって来ていた。
 そして、私と鈴木さんがステージから引き上げても今度はひろゆき氏を中心に、いろんな若者がステージに上がりこの不思議な「2ちゃんねる忘年会」は深夜まで盛り上がった。
 午後11時、私はロフトグループの大忘年会に参加するために、師走の酔い客があふれる歌舞伎町を後にした。
ロフトプラスワン席亭・平野 悠


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