ROOF TOP2003年11月号掲載
第69回
2003年の晩秋グラフィティ


▲新宿ロフトがオープンした頃(1976年)の『ルーフトップ』。なんと表紙は山下達郎、チャー、高中正義、そしてセーラー服の矢野顕子だ〜! この頃はまだレコード会社が元気で、一部不良の音楽と言われたロックが珍しかった時代で広告も快く貰えたな〜。この小誌、ヤフー・オークションで1万円以上の値が付いているという貴重なものだ。

ルーフトップのカラー化は…
 なんとも、このフリーペーパー『ルーフトップ』にメジャーな広告まで入り、18Pもカラー化されて、体裁・内容とも最近とみに充実していて評判がいいようだ。地方のライブハウスやレコード店、美容室などからもこの小誌を送って欲しいという依頼が沢山来る。だから、以前はよく見られた“もらってすぐにくずかご行き”は全くと言って良いほどなくなったという。  あたしゃ、あんな小さい文字の記事には閉口してほとんど読めないのだが、情報を求めているロック・ファンやサブカル・ファンには見逃せない記事が沢山あって、たとえ小さい文字でもやっぱり読んでしまうという。その理由として、一つにはこれから成長しようとしているバンド群の記事の数々を載せてくれる音楽雑誌が少なくなったせいもあるだろうし、ネットの情報の氾濫で音楽雑誌や情報誌自体が売れなくなっていることもあるようだ。
 また“新宿サブカル御殿”ロフトプラスワンの情報も、メジャーと言われる雑誌やテレビ局等のマスコミが大いに参考にしているらしい。だから、私ですら訳の解らんイベント(たとえば“くすぐリングス”とか“やぎの目”など)にテレビ局のディレクター連中がよくお忍びで取材(?)に来ているらしい。
 ここ数年のマスコミの“トークショー・ブーム”も、このロフトプラスワンが火付け役になったのだと誰もが言う。確かにこの店の参考原点はテレ朝の『朝まで生テレビ』だった訳だが、プラスワンはドンドン成長して今やお客が沢山で、整理券を発行しないと入場できないという日が多くある有様だ。
 このプラスワンを始めた当初、出演交渉をすると「なに!? 酒を飲みながら居酒屋で俺の話を聞く? ふざけるな!」と幾多も断られたものだが、今やそんな話は昔話となった。たとえば最近ではプラスワン出演回数最多の雑学の大御所、唐沢俊一氏が火をつけた『トリビアの泉』の大ヒットはなんとも嬉しい。
 だが『ルーフトップ』を充実発行するに当たっては毎月ウン百万の赤字が現存とあるわけで、確かにロフト・グループ自体の広告と思えば良いのだが、さすがに小林社長もこの赤字は辛いらしく「いつまでこの赤字を続けるんだ〜! お前ら『ルーフトップ』を続けたいのならなんとか頑張って広告取るか、50円でも100円でも良いから有料にしろ!」っていうことで、椎名編集長を始めとする編集部、プロモーション・セクションが頑張って大胆に広告を入れ、こういう形になったのだと思う。とにかくインディーズなロック音楽情報とサブカル情報が同居したフリーペーパーは貴重な存在なのだろう。
 まぁ、いつまでこの体裁が続くか解らないが、ある日突然ペラ1枚のスケジュールのみになる可能性もあるところがロフトらしくって面 白いとこだ。

歌舞伎町風俗情報─3 歌舞伎町のエロビデオ屋は今最大限の値崩れを起こしている(笑)

▲歌舞伎町風俗街でビデオ屋を回る平野。なぜか楽しい店巡りだ(笑)。

 最近、私のこのコラムの新宿風俗ネタが特に評判がいいと聞く、と自画自賛。私も色々な人から「先月号での熟女ナンパはどうなりましたか?」なんてよく聞かれて困ってしまう(笑)。今回の話題はモザイクなしでのエロビデオがこんなに安く買えるという体験レポートなのだ。なんとも本当に有意義で為になることなので、ちゃんと心して読んで欲しい(笑)。  

<10月6日の「おじさんとの語らい」の掲示板より>
 今夜は“サブカル・スカウトキャラバン・プラスワン・ゴングショー”の審査委員を頼まれて(これは無茶面 白かった、来れなかった人は絶対損をしたと思うよ)、そのステージがはねて、ネオンと酔い客の洪水の中、ひとり深夜の歌舞伎町をほろ酔い加減で歩いているとオタク系イベント常連客の永井氏(55歳、所沢のパーマ屋さん)に会った。
「おう、どこに行くんだい?」と声をかけてみた。「いや〜ちょいと前、手入れがあったビデオ屋に行って…」というのだ。「えっ、なんでそんなところに行くんだよ。どうせ騙されて空ビデオを買わされるのがいいとこだろ〜?」「いやね、摘発されたばかりの店って、当分やられないから、凄いお宝ビデオが堂々とあるんですよ」と言うので仕方なく(笑)付き合ったんだ。
 群がるキャッチのお兄さんの声を振り払いながら「いや〜オレも実は3年ぶりぐらいの怪しげビデオ屋巡りなんだけど、もう過去何度も騙されてひどいビデオを沢山買わされたよな。最近どうなっているのかな?」なんて好奇心を含めて永井氏ご推薦のビデオ屋の数件に行ったところ、いや〜なんとも歌舞伎町のエロビデオ屋は凄いことになっていた。なんと1本=500円からの怪しげビデオが沢山ある。まぁ、私も“警察手入れ記念”のご祝儀のつもりで適当に、それも全く期待しないでカーセックス盗撮モノ2本、熟女・おばさんモノ3本を計5,000円で買ったんだよ。
 それで昨夜鑑賞したところ、なんと1本に2時間以上の作品が入っているものもあってぶっ飛んでしまった。その上勿論モザイク一切なしなんだよ(これは当たり前なのだが、盗撮素人モノでもモザイクなしなのには興奮したな・笑)。
 これでは夜な夜な、こそこそ街のレンタルビデオ屋のアダルト・コーナーに行って1本=380円のモザイク付きやらせエロビデオをカウンターに女子店員がいないのを見計らってうつむき加減に頭をたれて借りて、また返却時も気恥ずかしい思いをして…なんてことなしに、歌舞伎町のビデオ屋に買いに走る方が全然リーズナブルだということを発見した。ちなみに気弱な人にとっても危険なことは全くなく(勿論多分ですよ)、ちゃんとビデオ屋の親爺に感謝され「来週は××のお宝ビデオが入荷予定なんで是非…」なんて情報までくれるのだ。
 この私の書き込みに永井氏のレスがあった。
「そー言えば、9日の早朝10chの『スーパー・モーニング』で“歌舞伎町で猥褻ビデオ販売をしている店が10数軒摘発を受けて、2万本ぐらいのビデオが押収された”とのニュースが流れたんですわ。で、次の日に新宿に出る用事があったので、いつも行くビデオ屋さんへ端から回ってみたのですが、俺の知ってる10軒ほどの店は全て何事もなく正常に営業してましたです。前に行ってた店が摘発を受けた時は、その近所の店(そこも激安店)に行ってそれとなく事情が聞けたのですが、今回はあのニュースを聞いた者達が一斉に押しかけて、“いつ本当の摘発があるか解らないから今のうちに買っとかないと”とばかりに普段はポツリポツリしかいない客がどこの店にも10人以上はいて、店の人とも話が出来ず、“さてあれは一体何だったんだろう?”と疑問を抱えたまま裏ビデオ屋を出ましたです。
 俺の知る限り、歌舞伎町の“裏ビデオ屋”では大体が6本=1万と言いつつサービスに1本加わり7本=1万が普通 なのに、10本=1万の店がプラスワンから中国人エリア方面に向かって2、3軒あって、激安地域になりつつありますですね。ただ最近で言えば面 白かったのが『加藤あい盗撮ビデオ』で、6本=1万の店では普通の1本として扱うのに、俺がよく行ってた激安店では逆にプレミアがついて、1万円以上買った人だけに1本=3千円で、って…おいおい、そりゃーボリすぎだろう! ってツッコミを入れる間も無く摘発されちまって、今時は安い店しか売れないのに『加藤あい盗撮ビデオ』の価格は売れ筋の店が高いという、面 白い現象になりましたですね。でも一番安いのは、摘発された店の5本=2千円(1本=400円)でしたが、今は2本=千円(1本=500円)が歌舞伎町界隈では一番安いと報告しておきますです。…って誰にだ?(藁)」

▲「白船平和義士団」の記者会見。なぜか私はインタビュー席に座らされた。会見には全テレビ局が来た。左から、平野 悠(ロフトプラスワン席亭)、沢口友美(事務局)、福田文昭(写真家)、塩見孝也(団長)、田中 宇(国際情勢解説者)、大熊雄次(事務局)の面々。

なんてドラスティックなんだ… 訪朝平和義士団が動き出した
 10月も入ってのある日、塩見孝也氏(元赤軍派議長)から電話があった。「平野、北朝鮮に行くぞ。お前も一緒に来い!」と言う。「馬鹿言うんじゃないよ。確かに今の北朝鮮“よいしょ”に組みするのは勘弁して欲しい。第一オレは5年前ピョンヤン(平壌)で2日間軟禁されて、強制送還を喰らっている身だ。ビザが下りる訳がない」と言ったのだが、塩見孝也氏の今回の訪朝理由を聞いていて、もし彼の言うことが本当に実現したとすればそれはとてつもなく面 白そうに思えた。これは私にとって今年3月のバグダッドでの「国際反戦会議」に行って“人間の盾”になり損ねて以来の面 白そうなことで、ひょっとしたら歴史的な瞬間に立ち会えるかも知れないと思った。
 塩見孝也氏と言えば、30数年前の日本が激動の“政治の季節”の頃、全共闘や超過激派を率いて“暴力革命”を起こそうとした張本人であり、世界革命のため“国際根拠地”を求めて日航機をハイジャックし「よど号事件」を起こし、破防法により拘束され獄中20年非転向を貫いてきた偉大な人物なのだ(ちなみに「あさま山荘銃撃事件」やリンチ殺人事件は“連合赤軍”であって塩見氏は関知していない)。
 塩見氏が言うには、今回の訪朝は観光や金正日万歳が目的ではなく、「訪朝平和義士団」を100名程度で結成し、白船で北朝鮮に行き、向こうの労働党要人、市民、学生、労働者と討論集会を開き、そこで率直に拉致や核、平和の問題の意見交換をしたいのだという。それで、その旨の手紙を北朝鮮労働党に送ったら「熱烈歓迎する」という返事が金正日総書記から労働党の要人を介してファックスが来たそうだ。
 この義士団は北朝鮮寄りの人ばかりではなく、右翼でも左翼でもノンポリでも、北朝鮮との戦争を望まない人なら誰でも参加してかまわないそうだ。“日朝不戦”“ピョンヤン宣言実行”“あらゆる核武装反対”“拉致問題の人道的見地による早期解決”、そして“日朝国交正常化”を実現するための行動だという。日本政府や野党が率先して行動しないのなら「民間使節団」として自分たちが訪朝して、民間からの外交努力によって両国に訴えかけようというものらしい。
「そんなことできる訳ないじゃないか?」と言いつつ、もし私のビザが下りるのなら私もこの訪朝団に参加してみようと思っている。そして今回、ピョンヤンに行ったら5年前お世話になった「よど号」のリーダーの小西隆裕さんに会いたいと思った。あの時代、東大医学部にいた小西さん。将来は無医村の医者になるのが夢だと語っていた小西さんが“革命”という非道(?)な運命に翻弄され、今は日本に帰ることができず北朝鮮にいる。そして、やはり“東西冷戦”という国際政治の過酷な状況に抵触されて“拉致”された人々や“北朝鮮利権”を持った連中もいて…これらを“運命”と言わずしてなんと言えば良いのだろうか?

ロフトプラスワン席亭・平野 悠
●おじさんHPはこちら http://www.loft-prj.co.jp/OJISAN/

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